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【ベターホームの道具物語】穴あき木べら

時は1975年。家庭でも肉を食べる頻度が増え、洋食のバリエーションも広がりつつあったこの時代、ベターホームでは先生たちが「家庭で作るおいしい牛肉料理の研究」をテーマに、ビーフシチューのレシピを開発していました。

本格的なビーフシチューを作るのには、たまねぎをあめ色になるまで炒める作業は欠かせません。そんな場から生まれたのが、この穴あき木べらです。

最初は、昔からあるしゃもじを使ってたまねぎを炒めていた当時の先生たち。でも、しゃもじは先が丸いので、鍋底に当たる部分はせいぜい1cm程度です。たくさんたまねぎを炒めたいのに、しゃもじでは効率が悪い。そこでしゃもじの先を切って平らにしてみました。

たまねぎをあめ色になるまで炒めるのには、30~40分程度かかります。先を平らにしたしゃもじを使って効率がよくなりましたが、長く炒めていると手が疲れてしまいます。さらに、熱くなってしまうのも悩みでした。

そこで、理想の木べらを職人に作ってもらうことに。「角は細く丸く、柄は長く」と具体的に希望を伝えて、試作品を作ってもらい、改良していきました。試作品ができるとたまねぎを炒め、シチューのルウをかき混ぜるのくり返しです。不満点と改良点を的確に伝えるために、型紙を作って渡したこともあったそう。

どんな鍋のカーブにも合うように、左右の厚みもカーブも微妙に変えました。素材は手にしっくりなじみ、軽いぶなの木をセレクト。

きわめつけが中央の穴。穴を開けることで、粘度のあるルウをかき混ぜる時も、へらにかかる抵抗がほどよく逃げて、だんぜんらくに。アイデアを出した先生は、外国のチョコレートを練る道具(スパチュラ)を見てひらめいたとか。

そんな機能を持つ穴ですが、ちょっと意外な活用法も。パスタメジャーとして使えるんです。1.6mmのスパゲティで約160g(2人分)がはかれます。

まるで料理の上達を知らせるかのように、使い込むと色が変わってくる穴あき木べら。ベターホームの原点とも言えるこの調理道具は、約50年ものロングセラーとなって家庭のキッチンや料理教室で活躍しています。